キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

きっと彼なら、これからもっと成長してすごい選手になる。


「それにしてもクソ熱いって!」


他に言い方はないの?

でも、やっぱり彼はこうでないと。
落ち込んでいる姿なんて似合わない。


「私も頑張ろ」


私は自分にもカツを入れ、再び作業に戻った。



ひと通り練習メニューが終わり最後のストレッチが始まると、空からポッポツと雨が降り出してきて慌てて道具を片付け始める。


「柳瀬!」


体育倉庫にボールを運んでいる途中で、池田先輩の声がして振り向いた。


「え……」


バックネットの近くにいた彼は、しゃがみこむ真奈の背中に手をあてて私を呼んでいる。

まさか、発作?


「北見先輩、これお願いします」


近くにいた先輩にボールを託して走りに走る。


「真奈! どうしたの? 苦しい? 薬は?」


胸に手を当てて必死に呼吸をしている彼女の顔が真っ青だ。