キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

ホッとして中江くんを見つめると、視線が絡まる。


「お前さ、頑張ったのは腕じゃなくて俺だから」

「は? ……あっ、ごめん。もちろんそうだよ」


私、興奮しすぎてよくわからないことを口走ったかも。


「なぁ、このまま頑張ってたら、甲子園届くと思う?」

「届くに決まってるでしょ?」

「そっか。決まってるのか」


彼は頬を緩める。


「腕が頑張ったんだから、俺が負けるわけにはいかないか」

「だから、それは――」

「サンキュな。目が覚めた。練習戻るわ」


彼は立ち上がると、私の肩をポンと叩いてから部室を出ていく。


「中江くん?」

「クソ熱いマネには負ける。やっぱ、このまま終われねぇ」


彼は振り向きもせずそう言うと、グラウンドに戻っていく。


「わかって、くれた?」


大きな背中を目で追いかけながらつぶやく。

よかった。