キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

先輩が真っ青な顔をして駆け寄ってくる。


「私は平気です。中江くんは?」


「大丈夫」と言いながら離れていく中江くんが、一瞬右腕を押さえたのを見逃さなかった。

まさか、ケガ?


「中江くん、腕見せて」
「平気だって言ってるだろ」


なぜか怒る彼が、絶対に痛みをこらえていると確信した。


「中江、ほんとに大丈夫か?」

「柳瀬が大げさなだけですから、先輩は練習に戻ってください」


先輩を遠ざけた中江くんはすぐに立ち上がり、なんでもない顔をして筋トレに戻ろうとする。


「中江くん! せめて腕を見せて」


私は心配で彼を止めた。


「もういいんだよ。こんな腕、つぶれたって、もう……」


珍しく弱気な言葉が耳に届いて、目を見開く。

失投して負けた責任をひとりで背負っている彼の苦しみが手に取るようわかって、胸が苦しい。

でも、私はマネージャーだ。