キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

沈んでいる部員たちに声をかけて回りたかったものの、これ以上中江くんに迷惑がかかったら……と思うと怖くてできなかった。


ウォーミングアップが終わった頃、バックネット裏に真奈が姿を現した。


「大丈夫なのかな……」


今日は晴天だった昨日とは一転、空には雲がもくもくと立ち込めていてお天気が下り坂。過ごしやすい気温だけど、気圧の変化が激しいと喘息が出やすいので心配だ。

さっき教室で、「昨日せき込んでたから、今日はやめておいたら?」と言っておいたのに。

私は素振りのためのバットを用意してから、彼女のところに走った。


「真奈。発作出るよ?」

「大丈夫だって。それより、池田先輩ってどの人?」


あまりに興味を示すので、彼女に先輩の話をするんじゃなかったと後悔した。


「えっと……あの右端でバットを持った人」


彼女に紹介すると、目を輝かせている。


「かっこいい」