キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

三塁につっこんだときはヒヤッとしたけど、中江くんのおかげで同点に追いついた。

あのときは他の皆も大興奮だったのに、少し崩れたら手のひらを返すように冷たい言葉を浴びせられる。


ピッチャーの制球が定まらないのはプロ野球でもあることだし、練習が足りなかったわけでもない。

初めて重要な局面を任されて重圧に押しつぶされてしまっただけなのに。


中江くんの気持ちを考えると、胸が張り裂けそうに痛い。
私はしばらく涙を流し続けた。



「おかえり。莉奈、どうだった?」


リビングにいた真奈が玄関まで飛んできて尋ねる。

今まで野球になんて興味がなかった彼女だけど、池田先輩の話をしてから気になっているらしい。


「負けちゃった」

「そっかぁ。残念。ね、莉奈が話してた池田先輩はどうだったの?」

「今日はヒットが出なかったかな。先輩、他校から研究されてて大変なんだよ」