キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

やっぱり部活以外にもトレーニングを積んでいるんだ。

それほど野球に情熱を注ぐ彼ですら試合で崩れてしまうなんて、どれだけ過酷な世界なんだろう。


「そんなこと言わないで。まだ始まったばかりじゃない」


センバツは無理でも夏の甲子園がある。

励ましたのに彼は首を横に振るだけ。


「俺のせいでお前まで嫌われなくていい」

「中江くん……」

「いいな。もう俺をかばうな」


私にきつく念を押した彼は、ベンチのほうに戻っていった。



帰りのバスの中では誰ひとりとして口を利こうとしなかった。

『俺をかばうな』とけん制された私はなにを話したらいいのかわからなくなり、ただ呆然とバスに揺られていた。

こんなときにマネージャーとしてなにができるか、さっぱりわからない。

北見先輩と吉岡先輩もうなだれたままで、声をあげることはなかった。


学校につくと、池田先輩が笑顔で口を開く。