中江くんは私に歩み寄り、腕を引いてベンチから離れようとする。
「中江ひとりのせいにするな。もっと点を取れなかったのが悪いだろ」
背中越しに池田先輩の声がして、救われた気持ちになった。
中江くんはずんずん歩き、人気のない駐車場につくとピタッと足を止めて振り返る。
「余計なこと言うな」
「どこが余計なの? 中江くんは――」
「今日の敗因は俺だ。……俺の投球次第で勝敗が決まると思ったら怖くなったんだ」
彼の口から弱気な言葉が飛び出したのは、きっと初めてだと思う。
「そんなの、あたり前じゃない」
負けたらあとがないんだし、緊張するに決まってる。
「霧島先輩はあたり前じゃなかったんだよ。俺なんて足元にも及ばない。クソッ。どんだけ鍛えても、霧島先輩には追いつけないんだよ!」
いらだつ中江くんは、近くのポールを思いきり蹴とばす。
「中江ひとりのせいにするな。もっと点を取れなかったのが悪いだろ」
背中越しに池田先輩の声がして、救われた気持ちになった。
中江くんはずんずん歩き、人気のない駐車場につくとピタッと足を止めて振り返る。
「余計なこと言うな」
「どこが余計なの? 中江くんは――」
「今日の敗因は俺だ。……俺の投球次第で勝敗が決まると思ったら怖くなったんだ」
彼の口から弱気な言葉が飛び出したのは、きっと初めてだと思う。
「そんなの、あたり前じゃない」
負けたらあとがないんだし、緊張するに決まってる。
「霧島先輩はあたり前じゃなかったんだよ。俺なんて足元にも及ばない。クソッ。どんだけ鍛えても、霧島先輩には追いつけないんだよ!」
いらだつ中江くんは、近くのポールを思いきり蹴とばす。



