キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

なんとか心気持ちを立て直してほしくて、近くにいたレフトの堀(ほり)先輩に話しかける。


「負けたら意味がないんだよ」


それを指摘されると言い返す言葉もない。
これでセンバツ出場は叶わないだろう。


「霧島先輩の再来かと期待したけど、全然ダメじゃん。肝心なところでガタガタになるとか、大きな口叩くくせして口だけかよ」


堀先輩が吐き出した言葉に顔が引きつる。

それ、中江くんのこと?

ハッとして後ろで立ち尽くしている中江くんに視線を移すと、彼はキャップを目深にかぶり表情を隠した。


「違います! 中江くんはたしかに大きな口も叩きますけど、絶対に甲子園に行くって、誰よりも強く――」

「柳瀬。やめろ」


私を止めたのは中江くんだった。


「でも!」


先輩たちに危機感を持たせるために必要のないノックまで受ける彼が悪く言われているのに、黙っていられない。