キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

三塁の走者が余裕でホームベースを踏む様子を、呆然と見守るしかなかない。


負けてしまった。


マウンドの中江くんは、立ち尽くして動こうとしない。

池田先輩が彼に駆け寄り、肩をポンと叩いて励ましているように見える。

我に返った私は、唖然としていた吉岡先輩と一緒に応援席を離れて、ベンチ裏へと走った。

皆、落胆しているはずだ。マネージャーが励まさないと。


「お疲れさまでした。すごくいい試合を見せていただきました」


ベンチから続々と引き上げてきた選手の中には、がっくり肩を落としている人もいれば、うっすらと涙を浮かべている人もいる。

私が笑顔で声を張りあげても、誰も反応してくれない。


「どちらが勝ってもおかしくなかったです。今日は負けてしまいましたが、今までの練習はきっと間違ってません」