キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

それとほぼ同時にボールが三塁の選手のグローブにおさまった。


もはや声も出なかった。
審判の判定を、息を呑んで見守る。


「セーフ!!」
「はぁ……よかった」


気が抜けた私は、ベンチに座り込むほどだった。


「アイツやるな。走塁コーチストップだったのに」


たしかにこの場面で三塁まで走れとは指示されないだろう。

でも私は中江くんの気持ちがよくわかった。
同点では勝てないからだ。

どうか彼の心意気に続いて……。


必死に願ったものの、その後は三振に打ち取られ、中江くんがホームベースを踏むことはなかった。


九回裏。
同点のまま押さえれば延長戦。まだ勝てる望みはある。


「いけいけ旭日!」


接戦のせいか応援にも力が入る。

ピッチャーはユニフォームを砂で汚した中江くん。

最初の打者は、速いストレートでファーストゴロに打ち取った。


「いける……」