キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

カーブを織り交ぜ、丁寧にストライクゾーンギリギリの位置をつくピッチングは、一年生とは思えないほど素晴らしい。

あっさりと三人で終わらせ、再び攻撃に入った。


「十二番って誰だっけ?」

「一年生みたい。あんなすごいピッチャーいたんだね」


中江くんを知らない先輩たちが、盛んに彼の話題で盛り上がる。

私は鼻が高い思いでそれを聞いていた。


いよいよ九回。
打線は八番からで、次に中江くんが控えている。

最初のバッターはライト前ヒットで一塁に出塁。
そしていよいよ中江くん。

紅白戦で軽々とホームランを打った彼なら、やってくれそうだ。


「あと一点、あと一点!」


期待を胸に応援する。
しかし私のほうが緊張して、ガチガチに固まっていた。


――カキーン。

いきなりの一球目。
ボールを芯で捕らえたような快音とともに、それは空高く上がっていく。