キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

ピッチャーの手からボールが離れた瞬間、先輩の体が動き始めて内角低めのボールをうまくバットに当てた。

しかしボールは空高く上がり、残念ながらライトのグローブにおさまってしまった。


「クソー」


大島くんが自分の脚をパンと叩いて悔しがる。
これでチェンジだ。


そして八回の裏。
マウンドに上がったのは中江くんだった。


「湊、キター!」


大島くんが興奮気味に身を乗り出しているけれど、私も同じ。

彼は滑り止めのためのロジンバッグを手にしたあと、バッターに鋭い視線を送ってからモーションに入る。


「頑張れ……」


ピリピリとした緊張感が伝わってきて息を呑む。

中江くんの長い腕がブルンと振り下ろされ、ボールが手から離れた。

彼はいきなり球速のあるストレートでストライクを取り、応援席がざわつく。

でも、中江くんの実力はこんなものじゃなかった。