キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

「本選を二回勝てて気が緩んでる。俺が内野も狙ってると思えば、先輩たちも本気になるだろ。まあ、マジで狙ってるけど」


彼の発言を聞いて驚いた。

たしかに、危なげなく予選と本選を勝ち上がっているせいで、次も余裕だろという雰囲気が漂っている。

でも、この先は強豪校ぞろいなのだから同じようにはいかない。

二番手のピッチャーが他のポジションで出場して、途中でピッチャーと交代というのは高校野球ではよくあることで、中江くんはそのつもりがあると先輩に示したのだろう。

彼は本気で甲子園しか見ていない。


「そっか。でも、ケガしたら意味ないよ。少し休憩して」

「ぶっ倒れたチビに説教されるとはなぁ」


嫌みな言葉で私をなじる彼だけど、「これサンキュ」と水を持ち上げてお礼をしてくれた。

中江くんの大胆な行動が利いたのか、先輩たちの目が鋭くなったような気がする。