キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

控えの選手がノック出しを担当する機会もよくあるけれど、ボールを出す人にも技術が必要で、池田先輩は断然うまい。

中江くんは他の選手ならあきらめそうなボールにも、スライディングして食らいつく。

もうすでにユニフォームが砂で茶色に染まっている。


「もう一本!」


それでも池田先輩は手を緩めない。
それから三十球ほどこなしてようやく終了した。


「中江、大丈夫かな」


ボール出ししていた池田先輩の息が上がっている。

フラフラになりながら最後まで粘った中江くんは、倒れ込んで動かない。

私は慌てて水を持って走った。


「中江くん!」
「大丈夫だから、でかい声出すな」


肩で息をしている彼はようやく起き上がり、私が手渡した水をのどに送る。


「中江くんはピッチャーなんだから、ここまでしなくても」