「チビ」
「なに?」


しまった。『チビ』と呼ばれて返事をしてしまった。と思い、一旦は振り向いたものの、再び顔を背けた。


「池田先輩が呼んでる」
「えっ?」


それを早く言ってよ。

ウキウキした気持ちで振り返ると、中江くんはあきれたような顔をしている。


「だから、わかりやすいって言ってんだろ」


あぁ、完全に池田先輩へのあこがれに気づかれているようだ。

依頼されたのはマシンガンノックの球出し。
今日は監督がいないので、池田先輩が右へ左へとボールを打っていく。


「まだまだ!」


先輩は厳しいが、普段彼がもっと激しい練習に耐えていると知っている部員たちは反発することもない。


「俺もお願いします」


内野の選手がひと通り終わったと思ったら、中江くんまで志願した。


「了解」


彼がサードの位置に入ると、池田先輩がきわどい場所にボールを打っていく。