「やっぱりすごいですか?」

「うん。だって懸垂をあの回数涼しい顔でできるヤツなんて他にいないぞ。福岡だって、ほら」


隣の福岡先輩はもうすでにギブアップ気味。

懸命に体を持ち上げてはいるものの、もう顔が鉄棒の上に上がらない。


「うわ、つらそうですね」

「中江がやってるから意地だろうな。中江はまだまだいけそうだ。体の柔軟性もばっちりだし、トレーニング積んでるのかな」


たしかに、皆で行う柔軟体操でも中江くんは驚異の柔らかさをみせる。

先輩に「柳瀬もやってみろ」と言われて参加したことがあるけれど、そこそこ体が柔らかいと思っていた私でもまったく歯が立たなかった。


「やってそうですね」


私は大島くんの話を思い浮かべながら答えた。


「ところで柳瀬は、スコアブックつけられるようになった?」

「ギクッとする質問ですね」


答えると、池田先輩は白い歯を見せる。