「なんだよ、湊。流し打ちでホームランかよ。しかも初球とか」


大島くんもあんぐり口を開けている。


「キャー! 中江くんすごい!」


応援の女子からも歓声が沸き、応援団全員が大喜びした。

ゆっくりベースを回った中江くんは、ホームベースで出迎えた池田先輩たちとハイタッチしている。


「すごいよ、中江くん」


これは、ちょっとやそっとの努力じゃないはずだ。

だって彼は、打者ではなく投手なんだし。


「霧島先輩みたいになりそうだ」


大島くんの意見にうなずく。

伝説の選手、霧島先輩も投手だったが、バッティングセンスもピカイチだった。
その姿に中江くんが重なった。


その裏。
紅白戦のときのように、九球で終わらせた中江くんは、池田先輩と並んで――ううん、もしかしたら池田先輩以上に活躍したかもしれない。

出場した時間は短かったけれど、間違いなく観客の記憶に一番残ったはずだ。