「柳瀬(やなせ)、ボール持ってきて」
「わかりました」


旭日(あさひ)高校野球部でマネージャーをしている私、柳瀬莉奈(りな)は、夏の甲子園予選のあとキャプテンに就任したばかりの池田(いけだ)先輩から指示されて、急いでボールの入ったカゴを持った。

これからバッティング練習が始まるのだ。


四番を任されているチームの柱でもある先輩にこうして声をかけられるたびにドキッとするのは、ひそかにあこがれているから。

私は速まる鼓動を感じつつ、バッティングピッチャーを務める部員のもとに向かった。


私は小学生の頃、地域の野球チームで男の子に交じってグラウンドを走り回っていた。

砂だらけになりながらも楽しくてたまらなくて、本当はずっと続けたかった。

だけど、中学からは女子は入部できず断念。
野球からも遠ざかってしまった。