「……か、一華」


真っ暗な視界からそう呼ばれ、ゆっくり目を開ける。
私の頭上から声がしたように聞こえて、少し顔を上げると


「あ、起きた?もう着くよ」


と私を見て微笑んでいる彼方くんが。
それが凄く心地よく寝ぼけていたのかボーっとしていたが、やっと今の状況がわかった頃には、顔がボンッという効果音がつくように真っ赤になった。

バッと彼方くんから離れる。


「ご、ごめんね!!肩貸してもらったみたいで!」


彼方くんの肩に寄りかかって寝ていたみたいで、恥ずかしくなる。


「いいよ、寝顔見れたし」

「なっ!」


ね、寝顔……っ、うわぁ最悪だぁ。
あれ、でも彼方くんよく朝起こしに来るから初めてではない……か。

いや、でもやっぱり慣れない。起きたらこんな綺麗な顔があるってどういうこと……っ。


「ついた、行こ」


と私の手を取り引っ張ってくれる彼方くん。


「じゃあね、絹ちゃん、片瀬くん」


今日はありがとう、と言って駅で別れる。