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「うわあ、すげー高級車」

「校門前に停まっててびびるんだが」


「あれって父親? テレビで見たことあるわ……マジもんかよ。栗田菜結って、やっぱ金持ちのご令嬢なんだな……」

「なんでこんなフツウの公立高校来たんだよ……。いやまあ、拝めて嬉しいけどさ」




車を降りたら、想像通り。


いつもは声をかけてくれる人たちも、なんだか遠巻きにあたしを見て。

目が合ったらまるで見知らぬ人みたいに、焦った反応をする。



お父さんの車が去っていったことを確認してから、男子4人組が愛想笑いでやっと近づいてきた。




「おはよ! なゆちゃんのお父さん、初めて生で見たわ〜。感動したすげえ〜」

「やっぱ家では“お父様”とか呼んでんの?」



そーいう話題いらないからね。


なゆだってフツウの女子高生なのに、お父さんが社長で家がお金持ちだからって謎に持ち上げられるのも、一線引かれるのもほんとにいやなの。


寂しい気持ちになるの……。