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いつも見慣れているはずの屋上庭園が、まるで始めて足を踏み入れたように違う景色として目に映る。

お見合い用に用意されたテーブルと椅子には、既に迫田さんのご両親とお祖母様らしき人が座っているのが遠目で確認できて、緊張に体が震えた。

「大丈夫、落ち着け」

小声で私に話しかけた迫田さんは

「すみません、お待たせしました」

と大声で着席する人たちに声をかけると、繋いだ手に力を込めて私の歩調に合わせながらゆっくりと家族の元へ歩いていった。

「お待たせしました。
さっき少し話しましたが、彼女が僕とお付き合いしている小谷朋葉さんです」

全員の視線が一斉に私に集まった。
軽く深呼吸して落ち着くために心の中で呪文を唱える。

「お待たせして申し訳ありません。
私、小谷朋葉と申します。たっ大知さんとお付き合いさせていただいております」

深々頭を下げる私に

「あらあら、可愛いお嬢さんじゃないの!お会いできて嬉しいわ。。そんなに緊張しないで顔を上げて朋葉さん」

お母さんであろう女性に声をかけられ、その柔らかな声に少しだけ安堵する。
顔を上げて私を見つめ優しそうな顔は、迫田さんに似ているが、切れ長で涼しげな目元はお父さんに似ているようだ。

少し緊張が溶けた私に、凛とした声の女性が話しかける。

「お待ちしてたのよ小谷さん」

お母さんに名前を呼ばれて安堵していた矢先、わざわざ名字で呼んだ年配の女性…この人が今回迫田さんのお見合いを強引に推し進めてきたお祖母様なんだろう。
笑顔で話しかけてくるその目は笑ってなどいなくて、再び私は緊張する。

「なかなか大知が紹介してくれないからお見合いを断る口実かと思っていたけれど、こんな可愛らしいお嬢さんとお付き合いしてたのね。小谷さんはおいくつかしら?」

「にっ28です…」

庭師になった私には就活なんて経験はないが、たぶん就職面接ってこんな感じなんだろう。

じぃっと心の中まで読み取るように見つめる視線に私の背筋がピンとする。

「あら、若く見えるけど意外といってらっしゃるのねぇ」

「すっすみませんっ!」

お祖母様の威圧感に負けて思わず謝る私はすっかり萎縮して押されている。