「で?
進まないってなんの話し?」


話、変えようとしてる……。

まあお互いはずかしいし、話を変えたいのはわたしも一緒。


「うん……実は本格的に勉強がやばい気がしてて……」


真面目な話このところ、テスト勉強がまったく進んでいない。

もちろん普段の授業の予習復習も欠かせないから、本当に時間がなくて。

その一番の原因は……。


「漣なのね」

「うん……」


ちらりと目を向ける先には、冷え冷えとした空気を纏う漣くん。

さらさらの黒髪が風に揺れて、より涼しげに見える。


昨日助けられたのがきっかけで、徐々に自分の気持ちに気づき始めた。


好きって言ったら、どんな反応するのかな。

めちゃくちゃ嬉しいって、幸せって笑ってくれるかな。


声をかけてきたあの男の人は恐怖の対象でしかなかったのに、漣くんは安心して、居心地がよくて。


これがすきってことのなのかなって思ったら、ますます勉強が手につかなくなって。


「それでぜんぜん進まないってわけね」


「うん……」


嬉しいような悲しいような不思議な気持ち。