「あの漣と僅差(きんさ)なんて、この学年じゃ海凪くらいだよ」


満点は900点。

漣くんは895で、わたしは890。


でもやっぱり悔しいものは悔しい。



「あんなに頑張ったのに……」


「中の中なあたしから見れば、海凪もじゅーぶんばけものだと思うけどね」


「なんか言った?」


「んーん、なにも」


するとちょうどチャイムが鳴って、みんなそれぞれの教室へと戻っていく。


「漣くんっ!
また1位だなんて、ほんっとすごいね!」


「ここ教えてほしいな、漣くん」


「漣くんさえ良ければ、放課後私たちと勉強しない?」


教室に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、窓側の一番後ろの席で女の子に囲まれる一人の男子生徒。


「……どーも」


教えて教えて!

いっしょに勉強しよ!勉強しよ!


声をかけられてるのに、当の本人から出たのはそれだけ。


「あんなたくさんの女子に囲まれて、よく涼しげな顔でいられるよね」


廊下側の一番前の席のわたしの後ろに、すずちゃんも座る。


「たしかに。
中学の頃からずっとだよね」