お母様がいなければ…


誰も私が部屋から抜け出したことなんて気付きもしなかった。
お母様しか、私を見ていなかった。


初めて悪いことをした


自分一人で。


お姉ちゃんと抜け出した時よりも、もっと…

謎の高揚感に包まれて、私は今にも走り出したい気持ちになる。


私はそのまま一人で夜の街を見て回った


初めは怖かったけど、怖いことなんて何一つなかった。

ただキラキラ光る世界を見ていた。


何度目だろう


少し自由になれるこの瞬間にハマっていたその頃



思い出したくもない事件に巻き込まれた。




あの日私は……

絶望の中



お姉ちゃん助けてと、心の中で何度も思った。

いつもみたいに助けてくれるって思ってた。



でも1人だった



痛い暗い辛い痛い



もう声を出すのも疲れた



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あの日の話を……



今目の前にいるお姉ちゃんと話す


サトルは背の高い金髪の男の人に放り投げられて動かなくなってしまった。

お姉ちゃんが私を……



逃げて逃げて蓋をしたあの日の事を伝えよう




「お、ねえちゃん」



あのね?

苦しかったの



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