そのままお姉ちゃんは倒れた男を見向きもしないで、早足にこの場を立ち去った。

姿を見せるつもりはなかったんだろう。

莉子ちゃんはすぐに居なくなってしまったと落ち込んでいた。


『すみません、鈴様。お怪我はないですか?』

『……怪我はないけど、取り残していくのもどうかと思うけど』


護衛の人にだって素直にありがとうと言えない私は、全然ダメだ。
まぁ、置いていくのは本当におかしいけどね。


でも自分の感情はコントロールできない


私はまだ子供だ


どんどん私は物事を卑屈にとらえるようになってしまった。
表向きでは笑い、内心は鼻で笑う。
表向きでは羨ましいといい、内心では、真底蔑む。


お姉ちゃんの優しさも、裏があるように思えてしまう。
私を知らない人達に出会いたい

その思いが強くなり、今の環境に嫌気がさした



私はいわゆるお嬢様で世間知らず。
でも…少しでいいから、この空間から抜け出したい。

そう思って、実行してしまった。


お母様が海外に行っている時に。


よく考えてみれば、私が愛されていたのはお母様にだけだった。