杏様はさっき、それをサトルに言われたんですね?どこまでも人の心を蝕もうとする男だ


「あたしはほんまに、アホや。悲しい想いさせてばっかりや」


その涙だったんですね


「杏、大丈夫か?」


泉が近づいてくる。サトルはどうしました?泉の歩いてくる方をみれば、サトルは地面に倒れたまま。


「気絶した」

「え、生きてますよね?」

「うん。心臓は動いてる」


特に動揺することもなく、サトルの手から奪ったナイフを私に渡してくる。

驚かされてばかりだ



泉は本当に…何者ですか?



「杏、妹と話しな。時間はあるから」

「でも…いつ起きるか分からへんし」


悠長に話してる暇はないんちゃう?と杏様は首を傾げた。ゆっくりと私に預けていた身体を起こす。



「大丈夫だ。話終わる前にサトルが起きたら、もっかい殴って寝かせる」


なんと

不安そうな顔をしていた杏様が、笑った。


「ふっ、助かる。ほなちょっと話すわ」


小さな声で、ありがとう。と私にも伝えて、杏様は鈴の元へ歩いた。



「鈴、お姉ちゃんと話そう?」



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