「わぁ!」

左側から男が突撃してきてバランスを崩す。危ない危ない。集中しとかな…
左側は気配読みせなあかんのやった。


「おい、杏、大丈夫か?」

「大丈夫」


悟らせない。バレたら大人しくしとけって言われるやろうからさ。

見覚えのある建物の中


覚えてる


鈴を追いかけてたどり着いたこの場所

スコーピオンのメンバーがただニヤニヤ笑ってあたしを見てるだけ。

あたしはその間をくぐり抜けて、ある部屋にたどり着いた。



そこにサトルと鈴がいた

あの日の事は、忘れたくても忘れられへん。鮮明に覚えてしまっている。


爪が掌に食い込む
ぎゅっと握る拳が震える


「杏ちゃん、いくよ」


敦子が手を握ってくれる。がんばれあたし。あと少しやねんから。


場所なら気持ち悪いくらい覚えてる


「そこのホールを抜けて隣の棟に行くねん」


そう指を刺した時
その開けたホールに、人が倒れていることに気がついた。

心臓が早くなる


泉達じゃないよな??


駆け寄ってみれば、見たことない男達とそして……


「こいつ、あの時の男」