愛は惜しみなく与う⑦

ずっと親父さんは黙って聞いてくれていた。俺が話し終わったと思ったのか、一言


「泉はそんな凄い男でもないけどな」


そう笑った


「そんなことないよ。俺らにとっては永遠に憧れの存在だ」


泉と杏は俺たちに、恋と愛は違うことを教えてくれたんだ。


2人とも、無償の愛を誰かに与えれる人だから。

それに俺は、小さい頃に泉にその愛を貰っている。充分すぎるくらいに。


「泉…いつ帰ってくるんだろう」

「どうかな。嬢ちゃんの手術が終わる前に帰ってくると思うぞ」


そうかな?そんなに早く帰ってくるかな。泉なら杏が目覚めるまでその場を動かないと思うけど…


「あれでも泉は、総長やってんだろ?」


ぐーんと背伸びをして、親父さんは俺に背を向けた。



「俺は何もできなかったけど、勝手にしっかりした奴に育ったから」





「えっと…」

「ほら、きた」



え?

親父さんの視線の先



泉が雄作さんと話しながら歩いてきた



「泉!!!!」


見たかった顔がそこに居る

俺の声でキョロキョロして、親父さんと俺を見つけて、泉はこちらに歩いてきた。