愛は惜しみなく与う⑦

戻れって言われて、あのメルヘンな部屋に戻れるかな……

飛び出て来た手前、すぐ戻れないし、まぁいいか。

ジッとしてるのも疲れて来たところだ。


組の人とでも話そうかな

そう思ったが、この屋敷から気配もしない。みんな忙しいのかな…

そう思い庭を見ていると、見覚えのある人がいる



俺はその人とあまり話せてなかったから、ずっと話したいと思ってたんだ。



「あの…身体は…大丈夫ですか?」


ぎこちない話し方になる。だってどう話せばいいのか分からないから。

ボーっと池を見ていたその人は、振り返り俺を見て「朔か」そう呟いた。



俺を引き取ってくれた人。



泉のお父さん



名前を呼ばれてドキッとした。まだ小学生の頃、蕪木組に泉に連れてこられた時は、殆ど話さなかった。

まだ小さい泉が殴られて、殴り返してるのを遠くから見ていた。


俺も最初は嫌いだった。
泉を殴る人だから。
でもこの人は変わった。


「どうした?みんなの所に戻れよ。何かあっても俺は守ってあげれないぞ」


「あ、はい。……いや、少し話せませんか?」