「杏は意識不明の重体で手術するそうだ。志木さんは手術が終わってるけど、まだ動ける状態じゃないってさ。
お前のことを、命がけで守った奴がいるんだ。お前がメソメソしているのを見ていると、イライラする」
話していくにつれてイライラしてくるのは、俺の悪いところ。
ここにいるのが嫌になり妹を押し退けて部屋を出る。
でも…とまだ言ったからだ。
やってらんねーな
同じ環境で育ってきて、あーも性格が変わるんだな。
そう思うと、杏は昔苦労したんだろうな。
人の気持ちに寄り添えるようになるまで、あいつはどれだけ傷ついてきたんだろう。
「早く杏に会いたい」
泣きそうになるのを堪える。
妹がどうするか知らないが、ちゃんと考えれる頭があるなら、家に戻るべきだ。
杏が居場所を…居場所が無くならないように守ってたんだ。
見捨ててもいいのに。
杏は守る選択肢を選んだ。
馬鹿な選択肢だけどさ。そこには杏の優しさや思いやりがいっぱい詰まってるんだ。
だからどうかわかって欲しい。
杏の想いを優先して欲しい。
東堂組の屋敷も大きくて、フラフラ外に出てみたけど、どこから二階に上がったのかもわからない。



