愛は惜しみなく与う⑦


「杏は意識不明の重体で手術するそうだ。志木さんは手術が終わってるけど、まだ動ける状態じゃないってさ。

お前のことを、命がけで守った奴がいるんだ。お前がメソメソしているのを見ていると、イライラする」


話していくにつれてイライラしてくるのは、俺の悪いところ。

ここにいるのが嫌になり妹を押し退けて部屋を出る。


でも…とまだ言ったからだ。

やってらんねーな



同じ環境で育ってきて、あーも性格が変わるんだな。

そう思うと、杏は昔苦労したんだろうな。

人の気持ちに寄り添えるようになるまで、あいつはどれだけ傷ついてきたんだろう。



「早く杏に会いたい」



泣きそうになるのを堪える。

妹がどうするか知らないが、ちゃんと考えれる頭があるなら、家に戻るべきだ。
杏が居場所を…居場所が無くならないように守ってたんだ。

見捨ててもいいのに。

杏は守る選択肢を選んだ。

馬鹿な選択肢だけどさ。そこには杏の優しさや思いやりがいっぱい詰まってるんだ。


だからどうかわかって欲しい。


杏の想いを優先して欲しい。


東堂組の屋敷も大きくて、フラフラ外に出てみたけど、どこから二階に上がったのかもわからない。