愛は惜しみなく与う⑦

杏が生かしたなら勝手に死なれるのは困るから。


もう一度よく瓦礫の山を見る。


杏はすごい奴なんだよ。
きっとなにか…助かるように何かしてるはずだ。


でも何を?2階の屋根の高さから落ちてるんだ。3階から落ちるのと同じ。
以前、東野矢の3階の教室から飛び降りていたけど…

ここには捕まる木も何もない。

そして飛び降りようと思って飛び降りるのと、急な落下は全然違う。



「杏は落ちる前、頭を押さえてふらついてた」


「え?何?」


「あいつ、目が…左目が半分くらい見えてないんじゃないかな」


ボーっと虚な目のままサトルは俺に話しかけてきた。目?
そういえば、杏の左のガードがどうとか…言ってた気がする


「普段なら絶対、足場が崩れても、なんとかしてるはずだ。でもあの時は、急に痛んだのか頭を抱えていた」

「待て。杏の目が半分見えてない?どういうことだ?」

「……緑内障」


りょくない?しょう?


「放っておけば失明する可能性のある病気だ」


こいつは…何を淡々と!!

でも今大事なのは、ここが崩れた時、杏は頭を押さえてふらついてたってこと