「違うよ?感情がない奴なんておらん」
「俺は!!俺は感情はない!知らないんだ!教えてもらってない!」
「ちがう。感情は教わるもんじゃない」
お姉ちゃんの言葉を振り払うように、サトルは腕をバタバタさせる。
お姉ちゃんはその腕を掴んで離さない
「あんたが覚えてしまったんは、感情の殺し方や!!!あんたの心の中には、ちゃんと感情があるよ。絶対ある。何も感じないようにしてるだけや」
「違う…俺は…何をしても感じない」
頭を抱えてその場にしゃがみ込んだサトルは、叱られて拗ねて泣いてしまった子供みたい。
誰一人として動けなかった
「あたしも得意やってん。感情を殺して、存在を殺して、誰の視界にも入らずに、ひたすら息を殺す。あたしは我ながら得意やったと思う。でもな、吐き出す場所をくれた人が沢山いた。
息を吸って吐いて…そんな普通のことをさせてくれる人が居たから、あたしはなんとかなった。
あたしも…そう言う人に出会えてなかったら、サトルと変わらへんと思う。多分やけどな。だからさ……」
あんたにも、そういう人はいたはずや
お姉ちゃんはそう言う



