愛は惜しみなく与う⑦


「違うよ?感情がない奴なんておらん」

「俺は!!俺は感情はない!知らないんだ!教えてもらってない!」

「ちがう。感情は教わるもんじゃない」


お姉ちゃんの言葉を振り払うように、サトルは腕をバタバタさせる。
お姉ちゃんはその腕を掴んで離さない



「あんたが覚えてしまったんは、感情の殺し方や!!!あんたの心の中には、ちゃんと感情があるよ。絶対ある。何も感じないようにしてるだけや」

「違う…俺は…何をしても感じない」


頭を抱えてその場にしゃがみ込んだサトルは、叱られて拗ねて泣いてしまった子供みたい。

誰一人として動けなかった



「あたしも得意やってん。感情を殺して、存在を殺して、誰の視界にも入らずに、ひたすら息を殺す。あたしは我ながら得意やったと思う。でもな、吐き出す場所をくれた人が沢山いた。

息を吸って吐いて…そんな普通のことをさせてくれる人が居たから、あたしはなんとかなった。

あたしも…そう言う人に出会えてなかったら、サトルと変わらへんと思う。多分やけどな。だからさ……」



あんたにも、そういう人はいたはずや



お姉ちゃんはそう言う