「氷室さんへの私の態度だけ見たら、もしかしたらハキハキしているタイプに思えたのかもしれません。でも、それは限定的で……通常の私は、うじうじ考えて身動きがとれなくなる暗い女なんです」

話しているうちに、自分でもそんな女性はどうだろうと思えてきて呆れ笑いがもれそうになる。

むしろ、ここまで言ってそれでもいいと受け入れてくれる男性の方が稀なんじゃないだろうか。そんな風に思い、自然とうつむいていた。

暗い車内。控えめな音量で聞こえるピアノの音だけが響く中、しばらくしたあとで四宮さんが聞いた。

「それは、遠回しに俺に諦めろと言っているのか?」

意外な返事に驚き、思わず顔を上げる。
相変わらず真面目な表情のままの四宮さんに、ふるふると首を横に振った。

「え、いえ……そうではなくて、四宮さんが私のことを勘違いして告白してくれたのなら申し訳ないですし……それに、あとからガッカリされるのが嫌だったので」

私の答えを聞いた四宮さんは、「そうか……」と小さく呟き、シートに背中をしずめた。
そして、右手で髪をかきあげると私に視線を移した。

「振られたのかと思った」

眉を下げ微笑まれる。
その、安堵を浮かべる表情からは、いつも会社で見せているクールさも完璧さも抜け落ちている。

四宮さんが初めて見せてくれた隙のように感じた。
胸がキュッと締め付けられ感情がこみあげてくるのがわかり、手をきつく握りしめた。