支店としては中規模だけど昨年度の成績は全支店の中でも振るわなかった。
県内でもトップクラスの人口を持つ天川町にあるという好条件の中、この成績はおかしい、このまま放っておくのはもったいない、というのが本社の考えだった。
そのため、先月から週に何度か本部の方が問題点改善を目的に天川支店に来ていて、会議にも出席したりしているのだけれど、そのうちのひとりが四宮昴貴副社長だ。
『四宮です。恵まれた立地にあるこの天川支店が来年度の全店舗売上トップ3に入るようしっかりとフォローしますので、よろしくお願いいたします』
数秒間頭を下げた四宮副社長は、大卒入社の三十歳。今年で九年目だと聞いたときには、思っていたよりベテランで少し驚いた。
落ち着きのある話し方や雰囲気をしているけれど、もう少し若く見えたのは私だけじゃなかったらしく、派遣の子が『ええ~、見えないです』と思わずなのか口にしていた。
四宮副社長が天川支店に顔を出すのは、週に数回。時間にして六時間ほど。
毎週水曜朝にする戦略会議にも出席している姿を見ると、本社での仕事もあるだろうに……と少し心配になる。
だって、会議での態度を見ると、四宮副社長が一番真面目に取り組んでいるのがわかるから。



