「えっと、勘違いって……?」

そんな私を可哀相だと思ったのか、四宮さんが言う。

「ああ、いや。悪かった。藤崎がこのワンピースを着ているのは俺に気を遣ったからだとはわかっていても、もしかしたらと欲が出た」

告げられている言葉の意味がわからず、まだ困ったままの私に四宮さんが続ける。

「先日の見合いの件、あれは藤崎の中ではまだ有効か?」

有効……?と一瞬考えたあとで、ハッとして口を開く。

「あ、はい。付き合っているということで、ご両親にお話ししてくれて構いません。そのへんは四宮さんの判断で適当にしていただければ。もしもなにかあっても、私も話を合わせますから」

ご両親の中では、まだ四宮さんと私は付き合っているということになっている。
だから、都合のいいところで別れたと四宮さんからご両親に話してくれればそれで……と思い言ったのだけれど。

真面目な顔をした四宮さんから返ってきた言葉は予想もしていないものだった。

「〝氷室の知り合い〟でも〝副社長〟でもない、ただの男として伝えておく」

そう前置きしたあとで告げられる。

「まだ出逢って間もないが、藤崎のことを好意的に思っている。今後もできるならふたりで会う機会を作って欲しい」

思わず動いたせいで、椅子がテーブルの脚にあたりガタッと音を立てる。
私の手を握る四宮さんの手に力がこもり、一気に頬が熱を持った。