『顔映りもいいし、この色なら通勤でも使えるだろう。これでいいか?』

私にワンピースを当てながら聞く四宮さんにコクコクとうなずき、店員さんに手伝ってもらいながら着物を脱ぎ着替えを済ませて試着室を出るともう支払いは済んでいて、そのスマートさに驚いたのは言うまでもない。

当たり前のように用意されていたヌーディピンクのパンプスにもびっくりした。

なにからなにまで四宮さんがしてくれて、私がすることなんてひとつも残っていない状態は、なんだかものすごく甘やかされている気分だった。

四宮さんは、通勤にも使えるというようなことを言っていたけれど、数万円するワンピースでの出勤は私には無理だ。
満員電車でシワになったら大変だし、普段使いしたらどんなに気を付けていたって生活の汚れがついてしまう。

だから、買ってもらったもののあれから一度も着る機会はなかったのだけれど、今回は四宮さんの誕生日パーティーだしせっかくなら……と思い、このワンピースに袖を通した。

もちろん、キッチンに立つ際にはエプロンをつけたし調理には細心の注意を払った。
そんなわけで、私的には、場に適した服を選んだつもりだったのだけれど……。

勘違いって、どういう意味だろう。

四宮さんの手はまだ私の手を覆ったままだ。じわじわと伝わってくる体温だとか、私とは違う皮膚の感触に気をとられ、思考回路がうまく働かない。

頭のなかはクエスチョンマークの大渋滞で、わけがわからなすぎて困り果てていた。