「そうなんですか? じゃあ、ご馳走作りますね。四宮さん、好きなものとか……」

明るいテンションの氷室さんに誘われ、私もついうっかりそう話し出してからハッとする。
四宮さんほどの人なら、ご自宅でものすごい誕生日パーティーを開きそうだし、先約だってあるかもしれない。

あのとても社交的で賑やかなご両親のことだ。
なにも計画していないとは思えない。

氷室さんは人の話を聞かない節があるから、四宮さんに了解を得ず勝手に提案しているだけの可能性が高い。
そう思い、慌てて四宮さんを見た。

「すみません。きっと予定があるでしょうし、氷室さんのことは気にせずそちらを優先してください」

するとすぐに「いや、予定はない」と答えが返ってきた。

「でも、藤崎の負担になるなら……」
「あ、いえ。負担なんてことはないですけど……たいした物も作れませんし。なので、それでもよければぜひ」

笑顔を向けた私に、四宮さんが目を細める。
綺麗な微笑みに息を呑み、数秒した後で動揺しながら口を開いた。

「あの、なにか好きな料理ってありますか?」
「好物か……そうだな。和食があると嬉しい」
「和食ですね。了解です。ただ、期待はしないでください」

「わかった」と答える四宮さんの笑顔がとても柔らかくて、突然魅力的に思った。

四宮さんとは支店でもたまに顔を合わせるし笑顔だって初めてじゃないのに、不意に沸き上がった感情を不思議に思うと同時に、本当に綺麗な顔立ちだな……と見とれてしまった。

「じゃあ、話もまとまったところで、とりあえず今日の夕飯確保するかー」

歩き出した氷室さんについて歩きながら、誕生日パーティーのメニューは何がいいかなと考えていた。