「あいつ、高校の頃から鈴のこと狙ってたよ。俺、鈴からたまに話聞くだけだったけどそれだけでわかった」

突然の発言に「え……」と声が漏れる。
驚いてそれ以上言えない私に氷室さんが続けた。

「おまえ、優しすぎるからな。ああいうダメなやつは惹かれるんだよ。全部包み込んでくれるから、疲れたときとか特に甘やかしてもらいたくなるんだろ」

四宮さんが「勝手ないい分だな」と呆れた顔で言うと、氷室さんは「そう?」と首を傾げた。

「俺にはわかるけど。外で遊んでてもさ、結局帰りたくなるのは鈴のところっていうか。グチグチ言われるのはわかってるんだけど、それも嬉しいっていうか、ホッとする。怒ってても笑ってても鈴のは全部愛情がこもってるから」

「最初はそうだったとしても、最近はいい加減呆れてますけど」と返した私に、氷室さんはヘラッと笑った。

「えー、最後まで面倒見てくれよ」
「あれだけ女性連れ込んでおいてよくそんなこと言えますね。別に、連れ込むのは自由ですけど、そういう日はせめて教えておいてください。なにも知らずに氷室さんの部屋に合鍵で入って女性と鉢合わせになる私の身にもなってください」

そのまま気づかれずに脱出できればまだいいけれど、女性に発見なんかされた日には修羅場回避不可だ。