以前、他の支店で派遣社員に軽い注意をしたところ、その派遣社員が派遣会社に報告し、少し問題になった。

派遣社員側からすれば、注意される筋合いもないということなんだろう。

派遣社員である塚田さんに注意がしたければ、本人にではなく、派遣会社に連絡を入れなければならない。

そんな理由から、店長からは派遣社員の扱いには気をつけるようにと重々に言われている。

そんな理由から……塚田さんが座ってネイルを眺めているなか、私だけがバタバタと忙しい毎日というわけだ。

「浅尾さん、岡島様の一年点検、何時頃終わりますか? 今、問い合わせが来ているんですけど」

「あと一時間って言っておいてー。早く来ちゃっても大丈夫なように、四十分後には洗車まで終わらせて駐車場に移しておくから」

「わかりました! あ、店長、すみません! 電話私が出ますから! あ、富田さん、ごめんなさい! トイレ、今、掃除中なんです……っ」

『藤崎さんって、いつも忙しそうだよな』と営業に言われた時には苦笑いしか返せなかった。

『店の前にさ、ぼーっと店内を眺める老婆の霊が出るらしいんだよ』なんて噂も最初は怖かったのに、今やもうどうでもよくなっているほどに余裕がない。

本当の恐怖は目に見えるものだ。

塚田さんが派遣されてからというもの、通常の仕事に加え、彼女がその日一日どんな仕事をしたかも日誌につけているので、受付がひとり増えたのに私の仕事は減っていないのが現状だった。

仕事は楽しいし、出来ることが増えていくのも嬉しいけれど……最近、少しストレスを感じたりもしている。