「MUSEって言ったら業界大手だし、私は玉の輿に乗れるかと思って来たんですよ。なのに、配属されたのは本社じゃなくて支店だし、支店にいる男なんてたかが知れてるし本当にやる気でなくて。まぁ、四宮副社長が来る日は別ですけど」

「……そう」

塚田さんはまだ二十一歳だとかそこらだったはずだ。
玉の輿ってことは既に結婚願望があるのか。というか、結婚相手を探すためにこの会社に来ているのか。

誰がどんな目的で会社を選び働こうと自由だ。だから塚田さんがどんな考えを持っていようと私には関係ないし、意見するつもりもないのだけれど……。

「でも四宮副社長、少し前から誘ったりしてるんですけど、全然興味なさそうなんですよね。私が若すぎるから遠慮してるのかも」

「え、誘ってるの? 副社長を……?」
「はい。ひとりでいるところを狙って。まぁ、根気よく続ければ結果もついてくるかなって思うので続けてみるつもりですけどねー。でも、副社長ってなると付き合う相手も選ぶのかな。家柄とかあるだろうし相手の身辺調査とかしたりして」

副社長を相手に食事に誘うってすごいな……と思いながらも「どうだろうね」とだけ返し、話題を変える。