店舗のバックヤードは車が十台は整備できるほどの広さがある。薄いグレー色のコンクリートを、骨組みがむき出しの天井についた白い蛍光灯が照らしていた。

店舗の日当たりを一番に考えたせいで、バックヤードは日中でも電気が必要なくらいに薄暗い。

浅尾さんは『でも、シャッター開ければ風通しはいいし、結構快適だよー。それにメカニックなんてどこもこんなもんだって』と笑うけれど。

「そういえば、浅尾さんって四宮副社長と同期なんですよね」
「そうだよー。って言っても、私は最初からメカニック希望で、四宮くんは入社早々本社の企画部に配属されたから、仕事を一緒にするのって今回が初めてだけどね」

「本社の企画部……かなり期待されていたってことでしょうか」

そんな部署、希望を出したって簡単に配属されない。
そこに入社早々に、なんて異例だ。

浅尾さんは、丁寧にボンネットを閉めながらうなずく。

「だろうね。大学の頃の成績はかなり優秀だったって話だし。お父さんは役員で、それにプラスしてあの見た目でしょう? 本社では陰で〝ホープ様〟だの〝エース様〟だの呼ばれてたらしいよ」

「それって、あまりいい意味ではなかったりしますか?」

〝陰で〟という言葉に引っ掛かり聞くと、浅尾さんは車の後ろからホースを伸ばしながら答える。