「十三時ぃ? んー、まぁいけるっちゃいけるけど……なぁに? また富田さんが勝手に受けたの?」
「……はい」
「もー、あの人は自分の顔立てて、面倒なことは全部鈴奈ちゃんに任せてるよね。今度はちゃんと言いな。受付は、営業とメカニックの橋渡しのためにいるんじゃないんだから」

ぷんぷんと怒ってくれている浅尾さんは、入社九年目の三十歳。
九割男性というメカニック担当に自ら望んで配属され、入社してから八年間メカニック一筋のベテランだ。

キリッと整った顔立ちにはメイクは必要ないほどで、スタイルもいい。その上、性格は気さくで私とも仲良くしてくれていて、本当にいいひとだ。

「んー!」とうなりながら背伸びをした浅尾さんは、私よりも五センチほど背が高い。

『長身の方がカッコいいから、一七〇センチ欲しかったんだけどねぇ。七センチも足りなかったよ』と話してくれたのは、いつだったか。

一六〇センチにも満たない私からしたら、浅尾さんは充分すぎるほどにカッコいい。身長的にも性格的にも。

朝九時、開店前の作業場には、ガチャガチャと工具の音が響いていた。