氷室さんに連れられるがまま、四宮さんとお見合いみたいなことをした休日明けの水曜日。

今日、車検に出していた車を取りにこられるお客様から、来店時間を早めたいと営業担当の富田さんに電話があったらしい。

本来なら、そういった確認は営業からメカニックに聞けばいいことだけど、富田さんはその対応を面倒くさがり、いつも私に言ってくる。

『たった二時間早めたいってだけだから、確認とらずにオッケーしちゃったんだよ。ほら、俺も休みのところ携帯に電話されて困っちゃって。だから藤崎さんからメカニックにうまいこと言っといてくれない? ああ、もちろんお客様の来店時には俺も立ちあうからさ』

富田さんは、お客様の来店時間を勝手に二時間も早めたらメカニックが嫌な顔をすることくらい分かっている。だから私を間に挟む。

正直、そういうのはちょっと……とは思うのだけど、富田さんは先輩だし、それくらいのことでクレームを出してこれからの関係に角が立つくらいなら、と受けてしまっている。

たぶん、ことなかれ主義の私も悪いんだろう。

「浅尾さん、その車、今日の十五時までだったのを、十三時に変更していただきたいんですが、大丈夫ですか?」

目の前にあるのは、ブルーのスポーツカータイプの乗用車。
そのボンネットの向こうからメカニックの浅尾さんがひょこっと顔を出した。

高い位置で結んだポニーテールが揺れている。