「四宮さんはご実家なんですか?」

これ以上、突っ込んだ話を聞かれないようにとこちらから質問を投げかけると、四宮さんは「いや」と否定した。

「就職が決まったタイミングでひとり暮らしをしている。……考えてみればそれが両親の不安を加速させたのかもしれないな」
「不安……女性関係の、ですか?」

さっきそういった話がまったくないから、それを心配して今日のこの会が開かれたと話していたことを思い出す。

「ああ。仕事も忙しかったし、実家に帰るのは年に数度だけだった。俺は、両親のあのテンションにはついていけないし、恋人の有無を聞かれてもずっと適当に流して、家に連れてこいと言われても無視していた。だからまぁ、俺の対応も悪かったんだろうな」

四宮さんは恋愛に対して淡泊らしいけれど、親に心配されるほどなにもないわけでもないという。
ただそういった話題をわざわざ親にすることでもないと、なにも報告しなかったのがまずかった……と反省の色を浮かべる彼に「いえ、仕方ないですよ」と声をかける。

「でも……そっか。それでこんなことになっちゃったんですね。さっき、女性関係の話がないって聞いて不思議だなって思ってたんです。四宮さん、とても整った顔立ちされてますし、性格だって落ち着いていて素敵なのにって」

たとえ四宮さんが女性に興味がなかったとしても、周りの女性が放っておくはずがない。強奪戦だ。

たしかに、大変失礼ながらあのご両親相手に下手な報告をした場合、だいぶ大げさな事態になりそうだと想像がつく。
私でもそういう話題は控えるかもしれない、と考えていると、不意に「藤崎もか?」と聞かれるから、「え……」と驚いてから今までの会話を思い出す。

「あ、そうですね。四宮さんはとても素敵だと思います。外見だけじゃなくて、仕事への態度も、性格も」