「いえ、そういうわけではないんです。私がひとり暮らしをするって聞いた氷室さんのおじさんが、じゃあどうせならって言ってくださって」
「……へぇ。氷室のおじさんとも仲がいいんだな」
「はい。昔から、色々と面倒を見てくださって……本当に感謝しています」
目を伏せ微笑みながら言う。
「部屋を用意してくれるという話になった時、本当なら遠慮しようかとも思ってたんですが、その代わりに氷室さんのお世話をしてほしいと頼まれて……それで。たぶん、私が気を遣わないようにっていうおじさんの心配りだったんだと思います」
そう言うと、四宮さんが小さくうなずいた。
「氷室のおじさんは、氷室とは違い良識のある優しい人だからな」
「実際に氷室さん、放っておくときちんとしたものを食べずに遊びまわって体を壊すので……氷室さんの身の回りのお世話をする条件で受け入れました。家賃も割安でとても助かってますし、私にとってはもちろんいい話でしたから」
立地条件がよく広さのあるワンルームをとても安く借りられているし、私にとってはプラスでしかない。
氷室さんの面倒を見るくらいであの部屋にあの金額で住めているのだからお釣りがくる。
……問題があるとすれば、たまに、朝、氷室さんの部屋に行くとベッドに女性が寝ていることがあるくらいだけど。
そんなことを口にすれば四宮さんが氷室さんにお説教の電話を入れそうだしやめておく。



