四宮さんに、ベッドであんな体勢になっていたことを説明し終えた頃、氷室さんがよろよろとした足取りでリビングダイニングに現れ、ダイニングテーブルの椅子を引いた。
ソファに座った私たちとは対角線上の位置に座った氷室さんが、おでこをさすりながら四宮さんを見る。
「四宮って、案外せっかちだよな。鈴に部屋で待ってろって言われたのに、我慢できずに来ちゃうし」
「相手が誰だろうと密室にふたりきりはリスクが高い。なにか起こる前に先手を打っただけだ」
「俺が相手なのに? 言っておくけど、四宮が知らないだけで俺と鈴はもう何百時間とか、そういうレベルで密室にふたりきりだし、心配したところで今さらじゃん」
呆れたような笑みで言った氷室さんに、四宮さんは表情ひとつ変えずに答えた。
「今までの関係に文句を言うつもりはない。ただ、最近のおまえの言動を見る限り、警戒した方がいいと考えているだけだ」
ハッキリと言った四宮さんに、氷室さんは驚いたような顔をしたあとで「それ、当たってるかも」と笑った。
そして、とんでもないことを言いだす。
「今さ、俺、鈴にプロポーズしたところなんだよ」
突然の発言にびっくりして思わずバッと立ち上がる。
焦りながらも何かを言おうと口を開いたけれど、氷室さんが「でも、断られた」と続ける方が先だった。



