付き合いは半年前からで、告白は副社長から。副社長の食の好みは和食で、休日は読書やドライブ、洗車をして過ごす。
映画館はひとりで行きたいタイプで、ひとりっこ。小さい頃からのあだ名は昴ちゃん。
そんなことを頭のなかで復唱していると、副社長のお母さんが「そんなくだらない話いいでしょ。今は鈴奈ちゃんと昴貴の話なんだから」とお父さんを注意する。
それから、キラキラした目を私に向けるから肩が跳ねた。
「それより、この子この通り真面目でお堅いでしょう? それも親から見れば長所に見えちゃうけど、鈴奈ちゃんからしたら面白みにかけたり、窮屈に感じたりしてない? 私とこの人の子なのに、ユーモアが全然なくてそこがずっと心配で。大丈夫?」
〝交際相手〟である私を、こんな風に心配してくれるのは、お母さんがいい人だからだろう。
私の立場になってきちんと考えてくれる優しさに、わずかに良心が痛んだけれど、笑顔を作った。
「いえ。四……昴貴さんは、たしかに堅い部分もありますけど、とても優しい人ですから。それに、仕事に向かう姿はストイックで好感が持てますし、とても心強く思っています。私にとっても、全部が長所に映っています。本当に……私にはもったいないくらいの人です」
職場での副社長を思い浮かべながら話す。演技でも大げさでもなく本当に感じたままを口にしたつもりだったけれど、お母さんは「あらぁ……」とパァア……ッと見てわかるほどの嬉しさを顔いっぱいに広げた。



