『これまでのことで、俺が案外嫉妬深いってわかっただろ。早く俺のモノになっておいた方が藤崎のためだ』

四宮さんが、そんな言葉と眩しいほどの微笑みを残して帰っていってから六日。
久しぶりに雑貨屋さんでも回ろうと少し遠出した先で、突然、四宮さんのお母さんに声をかけられた。

約一ヵ月前に三十分ほどしか顔を合わせていないため、誰だか認識するまでに時間がかかった。けれど、話しかけてきたテンションの高さと〝昴貴〟という名前にハッとして事なきをえた。

それと同時に、四宮さんとの交際は順調だという演技をしなければ……!と気付き、体が固まった。
お母さんには、四宮さんと私は付き合っているという嘘をついている。あれから、四宮さんから〝別れたことにした〟という話はされていないし、きっと今も継続中だ。

どうしよう……でも、とりあえず頑張らないと。

お見合いの時には四宮さんも氷室さんもいたけれど、今はひとり。お母さんを上手く騙せるか自信がないのが本音ではあるものの、一度引き受けたことの延長戦だ。

無責任なことはしたくないと頭を切り替え、「お茶でもしていきましょう。ね!」と誘ってくれるお母さんに笑顔でうなずいた。