「えっ……あ、えっと……あがります、か?」
思いもよらない返答をされ、言葉に詰まりながらも言うと、四宮さんは確認するように「いいのか?」と聞くからうなずく。
きっと私が戸惑うあまり言葉につっかえながら聞いたから、本心は違うんじゃないかと思い聞いてくれたんだろう。
そう思い「はい。もちろんです」と、来客用のスリッパを棚から取り出した。
考えてみれば、四宮さんとはこのマンションで何度も会っているけれど、それは全部氷室さんの部屋でだった。
だから私の部屋で会うのは初めてで……もっと言えば、部屋でふたりきりという状況は、四宮さんの誕生日パーティー以来初めてだった。
いくら部屋の造りは同じでも、自分が生活している場所に四宮さんがいるというのはなんだか落ち着かず、「腰を下ろしてください」と声をかけるのが遅れてしまった。
モカブラウンの布張りのソファに座ってもらい、ドリップしたコーヒーを木製のローテーブルに置く。
四宮さんがお土産で持ってきてくれたカヌレもお皿に移した。
小皿を用意したけれど、甘いものが得意ではない四宮さんは「藤崎がおいしく食べてくれればそれでいい」と遠慮していた。



