「今日は俺、夕飯いらないから」

朝食を食べながらそう言った氷室さんは見るからに浮かれていて、ああ、女の子と会うんだなというのがわかった。

「部屋に連れ込む可能性は?」
「まー、無きにしも非ず……あー、でもないかな。まだ知り合って日が浅いし部屋知られるの嫌だしな」

氷室さんがデートした翌朝は、普通に合鍵を使って起こしにいくと部屋に泊まった女性とバッティングする可能性がある。

なので事前に確認するという自衛策を覚えた。
朝から身に覚えのない修羅場は避けたい。


氷室さんがいないならと、夕飯を簡単なもので済ませ、洗い物を終えた直後インターホンが鳴った。

時間は十九時半。
ドアホンを見るとそこには四宮さんの姿があり、驚きながらオートロックを解除して部屋まで来てもらう。

インターホンが鳴ってから数分で私の部屋の前についた四宮さんはスーツにコート姿だった。
今日は火曜日だから仕事は休みだったのに……。

「こんばんは。もしかして、仕事だったんですか?」
「ああ。どうしても片付けておきたい案件があったから、夕方から少しだけな」

「そうなんですね。お疲れ様です。……あ、氷室さんだったら、今日は用事があるらしくていないんです。なにか急ぎの用事でしたか?」

きっと氷室さんの部屋のインターホンを押して出なかったから、うちの方のインターホンを押したのかな、と思い聞く。

けれど四宮さんは「いや、今日は藤崎に会いにきた」とハッキリとそれを否定した。